いつものアメリカ実話物…と思い、あまり期待していませんでした。が、しかし!面白かった!
いやぁ、リチャード・ギアは若いね~!!もう60歳過ぎているんでしょ?!なのに、野心に燃える若手作家に見えた!見えましたよ!確かに!
そう、こういう、口からでまかせのヤツっています。大学時代からも、会社に入ってからも。なぜ子どもの嘘がここまで発展しないかというと、冷静に親(や大人)が見ると嘘丸判りだから。子ども自身は「上手く騙せた!」と、ほくそ笑んでいても、大人はちゃあんと見抜いている、そんなことが殆どだからです。
でも、このリチャード・ギア扮する若手作家アーヴィングの嘘は、意外に発展していきます。真実でない、とみな疑いながら、でも、丸っきり嘘でもないよね?ね?ね?という感じで。大人の嘘はね、ほんのちょっぴり真実を入れると、本当っぽくなるんだよね~。アーヴィングも、編集者や出版社や手だれのビジネスマンを騙し続けていくのですが、壮大であればあるほど、長引けば長引くほど、騙されているほうも本気で騙されたくなってきているのではないかしら?と思わせる不思議さがあります。
ラッセ・ハルストレム監督は、手堅くまとめるよね。うわーっというような感じはないけど、起承転結が綺麗に上手くいっていると思います。
ここから、ややネタバレです。
うだつの上がらない作家、アーヴィングが、口から出任せで“凄い作品の構想を練っている”、と思わず見栄を切ってしまったのは、稀代の偏屈大富豪、ハワード・ヒューズの伝記を書くこと。その伝記はありきたりなものではなく、もう何年も人前に姿を現していないハワード・ヒューズに直接インタビューして、独占手記として出版するというものでした。
アーヴィンは、当然ハワード・ヒューズには、会った事もなければツテもない。嘘に嘘を重ねて取り返しのつかない所まで言ってしまうのですが、その騙しの蓄積が、まあ、見事なのです。基本は、「見てきたような嘘を言い」。映画の終盤に、彼が妻に嘘をつく時のように、自分自身で体験し得た記憶の断片、事実の断片をミックスして、まことしやかな嘘をつくのです。それは本当にリアルで、ついている自分自身も本当だ、と思ってしまうほど。何か、特別な人がやった背信行為という感じではなく、ちょっとの図々しさと応用の利く資料があれば、誰でも可能な気さえします。
でも、相手に選んだハワード・ヒューズという人物は、あまりに巨大過ぎて、結局アーヴィングは巨大権力の波に呑まれてしまうのです。
アメリカという国の、政治をも変えたスキャンダラスな事件。ラスト、アーヴィングの書いた著書はゴミと化し焼かれるシーンがあるが、私、読みたかったな…。
「ザ・ホークス~ハワード・ヒューズを売った男~」の映画詳細、映画館情報はこちら >>
(2011年洋画)