
山間の質素で静かな修道院。キリスト教にとって異国の地であるアルジェリアで、地元民に溶け込み、畑を耕し酪農を行い、採れた物だけで生活していく修道僧たち。その生活は単調でシンプルだがその宗教心は力強く、静かな生命力に漲っている。
1996年に、アルジェリアで実際に起こった、フランス修道院僧の誘拐・殺人事件。まだ真犯人も判らず謎に包まれている部分も多いが、犯人探し・推理がこの作品の目的ではない。宗教の相違を発端にしたとも思えるテロリズム(そう、それは実はフランスがアルジェリアを植民地として搾取していたときから続いていたことなのだ、とも言えるが)の犠牲になった、孤高の僧侶達。最初に単調でシンプルな修道僧の生活を、時には退屈に思うほど、丹念に切り取りながら描いているので、後々の結末に至るまでの緊迫感が、逆に半端ではない。全て見終わった後に俯瞰で思い返してみると、「あぁ、これはこういうことだったのだか…」と思い至るような、珠玉のシーンがいくつかあったことに気づかされる。
ただひたすら祈り、自給自足し、地域に奉仕し、…日々その繰り返しである。う~ん、私には無理。一週間位なら憧れなくもないけれど。無償の労働、と言えば、乳児期の子育てがそれに似ているけれど、あれは愛で充足されちゃうからなぁ…。
神に対する愛、地元民に対する愛、それで彼らは充足以上のものを得られたのだろうけれど。

ただ、神に仕える身とて、人間であり、葛藤や逡巡が数多く生まれる俗物であることも時にはあるのだ。だからこそ、テロの犠牲になるかもしれない、不安定なアルジェリアの情勢下に、このまま居続けるのか、退避をするのか、判断を迫られた時、8人の僧侶の意見は分かれる。そして運命の時は迫り…。
もともと、異なる宗教をもってしても隣人同士であるにも関わらず、「宗教に根ざした信念が強ければ強いほど残酷なことを行う(パスカル)」のだから、宗教程難しく、二律背反したものはない、と、典型的ぬるま湯日本人の私は思ってしまうのだ。
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(2011年洋画)