「アメイジング・グレイス」は、本田美奈子さんの美しい歌声もさることながら、恥ずかしながら両親の金婚式にて姉妹でハモッて披露した曲なので、私にとって思い出深い曲です。単なる賛美歌ではなく、イギリスの奴隷制度改革に尽力した政治家ウィリアム・ウィルバーフォースが師事した方の作詞ということだそう。
だから観る前のイメージは、奴隷制度改革のイメージソング的なものなのか?と思っていたのですが、そういう視点で鑑賞すると消化不良になってしまうと思います。

これは、この作品は、巧みな政治劇。資質・栄光・挫折・駆け引き・…様々な深遠謀略が渦巻く政治の世界の中で、奴隷制度改革、という、政治的視点に立った、新旧対峙の図式を物語化したものだと思います。これ単体で観るととても興味深い作品なのですが、「アメイジング・グレイス」がどのような役割を果たしてきたのか、などと、無理に紐付けようとすると、ナンのこっちゃ、になってしまい、面白さが半減するような気がしました。

若きウィリアム・ウィルバーフォースと友人のウィリアム・ピット(後の英国首相)の、政治談議や友情談義。病がちになっていき、理想と資質の狭間で苦悩するウィリアム。バーバラとの出会いで復活するウィリアム。そして、何と言っても、議会での新旧対決が非常にしっかり描けていて、歴史物としては大変上質な作品だと思いました。
ところで、両親の金婚式で、見事なコントラルトで歌った(と本人は思っている)「アメイジング・グレイス」は、もう冒頭の部分しか歌えないんだな、私は。中盤以降は歌詞をもう覚えていないのよ。年を取るってこういうことなのね。
「アメイジング・グレイス」の映画詳細、映画館情報はこちら >>
(2011年洋画)