余震の中、試写会で観ました。
この震災が、息子の小学校卒業が、中学入学が、二番目の息子の学童クラブ卒所が、全てがきっかけで…あまりにも凄い勢いで、何もかもが変化していく春…もう、戻れないのだ、と痛感する日々…だからこそしみじみ突き刺さる作品。いや、参った。「家族は自分で作りなさい」と、アネット・ベニングが言うセリフ。いや、参った。
私は家族を作れている?自分の力で?思春期を迎える息子にどうやって対峙していく?
己の力量の無さと、足元から崩れてしまいそうなストレスと精神状態を抱えながら家族を作っていく、それが、日々の積み重ねこそが「家族」なのだ、と、じっくり感じさせてくれた作品です。先入観やストーリー展開を知らずに観るのがお勧め。
アネット・ベニング、ジュリアン・ムーア、マーク・ラファロの3人の演技は言うに及ばず、役者さん達の素晴らしい演技も必見です。だからと言って重た過ぎない、これも又素晴らしい。
ということで、ここからネタバレ含んだ感想です。
同性愛カップル(レズビアン)ニック(アネット・ベニング)とジュール(ジュリアン・ムーア)。彼らは学生時代から愛し合い共に暮らし、精子バンクによってそれぞれ娘と息子を産み育てます。
この家族のあり方がとてもいいのです。アンユージュアルではあるけれど、透かして見ると、今の(普通の)男女の結婚生活が抱えている問題がそこかしこに見られる、ニックとジュールの“家庭”。“家庭”の中にしか居られず、自分を認められずに自信喪失、浮気に走るジュールや、多忙な仕事の中アルコールに逃げるニックは、男女のカップルのあり方とよく似ています。というか、カップルで生活し続けていくことの難しさを表しているのではないでしょうか。-月日を重ねていくと単なる恋愛関係は過ぎ、特に子育て中は、夫婦は戦友なのだもの。
思春期の子ども達は大人になる過程をそれぞれ生き、新しいことに胸を膨らませ、友達関係に逡巡し、大人(自立した存在)と子ども(保護されるべきもの)との間を揺れ動いています。脚本・監督のリサ・チョロデンコが、肩の力の入らない表現でそれを描いているところが見事です。
“家庭”の在り方が徐々に変わっていくのは、精子提供者のポール(マーク・ラファロ)に、18歳になって大学で一人暮らしを始める日を間近にしたジョニ(ミア・ワシコウスカ)が、弟レイザー(ジョシュ・ハッチャーソン)と共に純粋な興味から(「生物学上の父親って誰?」)、会うことにしたのが始まり。今までにない、ある種の“父”の影。“男”の趣味。それが次第にこれまでの4人で過ごしていた“家庭”を侵食していく…。
マーク・ラファロは俳優として大好きです。「イン・ザ・カット」の頃からすごーく好きでした。でも、刑事役が多くて、私が(勝手に)嗅ぎ付けている彼の本質(知らないけど(笑))、ダメ~な感じがあまり出てこなかったのが残念だったんだよね~これまでは。でも、この作品で、彼は私の思った通りの男だった!と確信したので、すごーく嬉しいです。いい感じのダメっぷりで素敵なんですよ。
私もいつか言いたいね。「おととい来い」や「寝言は寝て言え」のような素晴らしい単語と同列に、「18年子育てしてみてから言いなさい」!ああ、たまんない。まだまだ私も未熟者でした。脱帽。
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(2011年洋画)