第二次世界大戦の終結間近、それまで爆撃の被害にあまりさらされていなかった、東ドイツの美しい都(“エルベのフィレンツェ”と呼ばれていた)ドレスデンに、連合軍の英空軍によって激しい空爆が行われました。そこに住む病院経営一家の、その日を中心にした出来事を描く秀作でした。
ヒロインのアンナは理想に燃える24歳のドイツ人女性。父親が経営する病院で、看護婦の仕事を懸命に勤めています。若き医師アレクサンダーという婚約者もいて、きな臭い戦時下ではありながら、1日1日を無謀とまで言われるひたむきさで過ごしています。
そこに現れた、敵地空爆時に不時着して逃れてきた敵兵ロバート。彼の介護をする内に、いつしか彼に惹かれ、その想いは激しい恋情となり…
と、こう書いてしまうと、なんだか「パールハーバー」みたいに、戦争という非常時に、ついうっかり2人の男の間に想いが揺れ動いてしまう、夢見る夢子チャン的な雰囲気なのですが、
ぜーんぜん、そんなことはない。
まず、恋愛バナシの方からいくと、きっと運命の人っているのだな、と思わせる、力強い展開(って、私が夢見る夢子チャンなのか!?)。
なぜロバートに惹かれて、やっちゃう(失礼!)のだろう?それって理屈じゃないよね。
理屈じゃないけど、理屈じゃないけど、「自由の意味を履き違えるな」というようなことを囁かれた時に、想いは決定的になったのだと思う。
(この真の自由とは、という問いかけはこの作品の隠れテーマでもあると思います)
わずか数日の恋に燃え、成就するなんて…
う~ん、若さだね~
いや、冗談でなく、ほんとにそう思ったのだ。
一方で、アンナの同僚マリアは、ユダヤ人の夫と添い遂げると決意。激しい空爆の中でも防空壕には行かず…だって、ユダヤ人の夫は防空壕に入れてもらえないから…その愛の形には、高潔なものを感じました。
それから、途方もない予算を投下して撮影したという、ドレスデンの空爆シーンが、本当にもう凄まじくて…。その凄まじさが、これでもか、これでもか、と続く中、死に直面した市井の人々がどのような目に会うのか、が描写されていて、本当に恐ろしくいたたまれませんでした。
石造りの堅牢な建物は、窒息の恐怖もあるのだと、初めて知りました。
そしてたった一晩で、歴史ある美しい街は廃墟となるのですが、ほんの最近まで、大聖堂の廃墟はそのままの形で残されていたのですね。
この大聖堂を2005年に修復・改築して、それから後に作られたこの作品、ある意味でのドイツの戦後の“けじめ”であるような気がします。
2時間半という大作、決して長く感じませんでした。
★★★★★
(満点★5つ)
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(2007年洋画)