1月の第一週目に試写会で観た作品です。
ドミニク・クーパーの一人二役の演技が見もの、ということで、期待して観ました。本当に、同一人物とは思えない、素晴らしい才能で、ウダイとラティフの人格が全く別物の両方の役をこなし、息を呑む展開でした。
少しネタバレです。
イラクで普通に軍に勤務していたラティフは、ある日呼び出され、サダム・フセイン大統領の息子、ウダイの影武者になることを、有無を言わさず厳命されます。それは、彼の姿形がウダイにそっくりだったから。
しかし、似ていたのは姿形だけ。彼は、横暴な政権のやり口、残酷なウダイの日常生活についていけずに苦しみます。家族の命を人質にとられ、影武者として常に危険に身を晒しながら、そして信念を貫こうとすれば父親を殺され…。気が狂う一歩手前の日常は、ラティフを蝕みますが、それ以上に根本から蝕まれていたのは、イラクの政治と常軌を逸したフセインの息子のウダイだったのでした。
残酷で冷徹なイラクの政情、ついついアメリカ側に寄って見てしまう歴史的な背景があるものの、そこに実際に生きる人々は、本当はどんな風に感じ、どんな風に考えているのか、について、思いを馳せる作品となりました。
(2012年洋画)